ラブレター

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カフェの窓際の席で、私はボ~ッと外を眺めていた。
もうどれくらいの時間が過ぎたんだろうか?

忙しそうなサラリーマンが携帯電話で話しながら走っている。
ちょっと着飾った私より若い女の子が友達と楽しそうに話している。
ひどく肩を落としたおじさんが下を向いて歩いている。

私はチラッとテーブルに置いた鳴らない携帯電話を見てみた。
どうして鳴らないの?
それから5分ほど携帯を醒めた目で見てから私は席をたった。
それは、ある暑い夏の日の午後の事だった。


その頃彼は機上の人だった。
少し眠った後でカバンから封筒を取り出すと丁寧に開封した。
それは私の書いた手紙だった。
そこにはこう書かれていた。



元気にしてますか?

私、ず~っと貴方がプロポーズをしてくれるのを待ってました。
待っていたなんて一言では言えないほど待ってました。
こんな書き方をする女だから
貴方は、私にしてくださらなかったのですね。

私、実は知ってました。
貴方は知らないと思ってたのかもしれないですけど
ず~っとあの子との事、最初から全部知ってました。
何故言わなかったのか?

自分でも不思議でなりません。
言いたかったんです。
でも、どうしても貴方の顔を見ると言えなかったのです。
言いたいのに、死ぬほど言いたかったのに。。。

あの子と別れてと、どれほど言いたかった事でしょう。
言えなかったのは、貴方の事が好きだったからではないという事を
初めて最近になって、私は理解しました。
それは、私のプライドだったのです。

私があの子に負けるはずなど無いという女のプライドだったのです。
必ず貴方は私のものになると思ったました。
それも最近になって初めて負けたんだと認識しました。

仕事もできて、何をどうあの子と比べても負けるはずがなかった。
容姿も何もかも負ける要素が一つもなかったからです。
だけど、私は負けました。

こんな惨めなお手紙を、貴方に書く羽目になるとは
この瞬間まで思わなかったのです。
私は、貴方と幸せになれるとず~っと思ってました。

もう、それは叶わぬ夢と知りました。
こんなお手紙を、書くような女ではなかった。
今になって初めて自分の愚かさを知って泣きたい思いです。

付き合いだしてからしばらくして貴方はボソッと言ってくださいましたね。
『君を愛していると』
あの時の私のままでいればよかった。

今になって、やっと私は貴方の前で裸になれたように思います。
ほんとに素直な私になれたんです。
だから、私は素直な気持ちでこのお手紙を書いてます。

貴方は、ず~っと相手の愛情の深さで、
あの子と私の愛情の深さを確かめていたんですね。
そして貴方の愛は、その深さに比例していた。

私は、今の今までその事に気づかない愚かな女でした。
貴方は私の愛情の深さに比例して私を愛してくれたのですね。
今になって、やっとわかった私は、泣きたい思いでいっぱいです。

でも、わかって下さいね。
私は貴方が大好きだったのです。
ちょっと独りよがりだったかもしれないけど
ホントにホントに大好きだったのです。

いや、今も大好きなんです。
負けたという意識が、過去形で書かせてしまったのです。
でも、もうあなたの事、あきらめます。

あの子に差し上げるなんて言いません。
そんな事言ったら、ますます惨めになってしまう。
もともと最初からあの子のものだった。

ほんとは、私のものになるはずだった貴方。
もうこの時点で、貴方をもの扱いしてる時点でダメですね、私。
どうしてこんなんなんだろう、私って。。。

長いお手紙になってしまいました。
貴方と過ごせた夢のような日々を胸に抱いて
これから私は生きていきます。

あの子を、きっときっと幸せにしてあげてくださいね。



                                 素直になれなかった私







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