並木道

イメージ 1

休日の遅い朝食をとりながら、私はどう言おうか悩んでいた。
別にどこで言ってもいいんだけど、悩んでいたんだよ。
こういう事は、とっても大事なことなんだからね。

そんな時、私の脳裏に鮮やかに閃きが走ったんだよ。

『ねぇ、覚えてる?』
『そんな事いきなり言われても分からないよ。。。』

『初めて肩を並べて歩いた時の事だよ(^o^)』
『う~ん、どこだっけ?』

『あの並木道だよ』
『並木道???』

『学生時代によく行った並木道だよ』
『あ~、いわれて見ればよく歩いたな~』

『今から行きたいな』
『今からか~、ん~ちょっと遠いけど・・・よし、ほんじゃ行こうか!』

突然あの場所に行きたくなったのは、それなりに私には理由があった。
でも、二人で、いや一緒に行くと言ってくれるのかを試したかっただけなんだ。

それから車に乗り込んで走り出した。
二人の間には、特に会話があるわけでもなかった。
カーステからFM放送がひっそりと流れている。
私は、流れる風景を見ていた。

もう結婚して何年も立つし今更そんなに話す事など何もない。
お互いに、会話にならない会話をするだけだ。
そんな事ももう慣れたし、変わらない毎日が車窓と同じように過ぎ去っていくだけ。
だけど、今日は重大なお話をしたかったんだよ。

ふと耳に懐かしい音楽が聞こえてきた。
私達が付き合いだした頃、彼は車のCDをたくさん用意してくれた。
私に聞きたい曲を聞きだしては、レンタルしてCDに焼いてくれたりもした。
あの頃は楽しかったな~。一緒にいるだけで幸せだったんだ。

その曲のイントロが始まった時、彼はハッとしたようで
その顔を見て私は吹き出しそうになった(笑)

『これ、懐かしいね』
『覚えてるの?』

彼は苦笑いを浮かべながら
『覚えてるよ』と困ったような顔をした。
『どういう風に覚えてるの?』
私は、ちょっといたずらっ子のような気持ちになって聞いてみた。

『これさ、歌詞が衝撃的だったんだよ(笑)』
『歌詞のどの部分?』

『毒入りスープで一緒に行こうだよ(苦笑い)』
これはすんごい曲だと思って何度も何度も聞いたんだよ。
友達に、あんな美人の嫁さん貰って浮気したら毒入りスープ飲まされるぞ!って
もうさんざん言われたしな。こんな歌、うたう人がいるなんて驚いた記憶があるよ。

なんだか嬉しくなって、さらに追い討ちをかけてみた。
『身に覚えがあるのかしら?』
一瞬ビクっとしてから『あるわけないだろ(゚Д゚)ゴルァ 』
『ほんとかしら?』もう男って、ほんとバカなんだからね=*^-^*=にこっ♪

そして目的地について車を降りて歩き出した。
『ねぇ、そういえばなんで突然ここに来たかったの?』
彼は、不思議そうに聞いた。

『ここはね~、初めてデートした場所なんだよ』
『んん!?、ここが初デートだっけか?』

あ~、ほんと男ってこういうのすっかり忘れるんだ。。。

『ここで、初めて待ち合わせてデートしたんだよ』
『ん~、いわれて見ればそんな気もしるけど、あんまり覚えてないや(x_x;)』

ちょっといじける素振りで言ってみた。
『忘れちゃったの?』
(゚д゚lll)!
『いやいや、ちょっと記憶が。。。』

私は、自分から彼と手を繋いで、並木道を二人して歩き出した。
『今日は、ちょっと言いたい事があるの』
彼は、一瞬驚いたようで、
『悪い話?』って聞いた。

私は、繋いでいた手を離して、彼の目の前にかがむようにして
『どっちだと思う?』
と、いたずらっこの悪魔の微笑みでいってみたんだよ。

彼は、真剣なまなざしで、しばらく考えてから
『わかんない』と、心底困った感じで答えた。











『赤ちゃん、あかちゃんできたんだよ』




彼は、約3秒ほど( ゚д゚)ポカーン して
『ほんとか!、ほんとにできたのか?』
もう今まで見たこともないような笑顔でそういうといきなり抱きしめて動かなくなった。

かなり長い時間だったと思う。
そしたらなんか、髪の毛に感触があった。
もしかして泣いてるの?
『びっくりさせるなよ』
『もしかして離婚したいのか?って思ったよ』

私も、泣きだして
『ここからまたスタートしたかったんだよ』
『ここで始まって結婚して、今度は赤ちゃんと三人で、またここから始めたかったんだよ。』
『最近さ~、夜も遅いし、寂しかったんだよ』
『ほんとに毒入りスープつくろうかなって、ちょっと思ったんだよ』

彼は、身体をちょっと離して私の目を見て言ってくれた。
『忘れててごめん』ってね、

『人生の記念日に、君はキレイって言ってくれたら許してあげるね』

彼は、微笑みながら芸術的な事を言った。
『並木道を二人して並んで歩いてここまできたけど
これからは、私達が並木になって、赤ちゃんの道を創らないとね』

『うんうん、そうだね』

なんのかわり映えもしない並木道だけど、私達にはかけがえのない大事な場所
その時、ふいに向こうのほうでシャッターの音がした。

『ねぇ、あの人に今の写真送って貰おうよ』
『きっといい人だから、頼めばおくってくれるんじゃない?』
『そうだね、じゃあ忘れてた罪滅ぼしに頼んでくるよ』
『うん、私も一緒に頼むよ』

そして今度は3人で、いや正確には二人でまだ見ぬ赤ちゃんの為に
並木道を並んで、ステキな想い出の写真を撮ってくれた人に向かって歩き出した。

『いい人だといいね』
『いい人に決まってるよ』

あの人も、私達と同じようにここが大事な場所なんだからね♥(・∀・)♥








写真は快さんからいただきました。ありがとうございます。
快さんのブログです。
http://blogs.yahoo.co.jp/kaisan0220





PS
これほんとはラブレターに使う予定だったけど
せっかくいただいたので、この写真みてつくりますた。
それにしてももうちょっと文章力があったらよかったな~。。。